「君」
どうしてその名前を呼ぶのにこんなに勇気がいるんだろう。
「どうした?」
いつものように笑顔で答えてくれる事なんて、もう知ってるはずなのにどうして。
どうして、こんなにも嬉しいんだろう。
「今日、掃除どこだっけ?」
「えっとなー、トイレ!」
「やだなー」
「なっ」
そのまま男友達の所へ走っていってしまう君の背中をじっと見た。
もし、君が視線に気がついていたらどうしよう、気付いて欲しくない!
いつもそう思うけど、実際少し気がついて欲しいなと思う。
もどかしいような、歯がゆいような気持ちになって私はセーターの裾を思い切り引っ張った。
恋が始まっている。
「ー、掃除行くよー!」
「えっ、あぁ。うん!」
話したと言えるか、言えないか。そんな会話をするだけで、私は心臓が縮むぐらい緊張する。
でもそれだけではない。
自然に笑顔になれる。
自然に元気が出る。
(恋の始まり**05/12/21)
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